いつも弊所のホームページをご覧いただきまして誠にありがとうございます。
さて、スタッフの採用活動を進める中で実感したのですが、最近は、当初から他所で副業もする、あるいは弊所での勤務を副業とすることを前提に、弊所に応募してきてくださる方々が顕著に増えています。
これ自体は、働き方が多様化するなかで、とても望ましいことだと思います。
もっとも、これに伴い、労務管理については、新たに、気を付けておかなければならない事情が生じていますので、簡単ではありますが、ここに記載させていただきます。
なお、本ブログは、法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じて適切な助言を求めていただく必要がありますことを、ご了承ください。
【副業・兼業における労務管理】
コロナウイルス拡大を契機とした景気後退やテレワークの一般化により、兼業・副業という形で雇用するケースが増えてくると考えられます。兼業・副業をしている(ただし雇用契約に限ります)労働者を雇用する場合について、昨年9月に改定された「副業・兼業に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」と略します。)からいくつかのポイントを指摘します。
◎労働時間について
労働基準法38条では、労働者は複数の事業場で就労する場合の労働時間は通算して計算すると定められています。
ガイドラインでは、労働時間の通算については、事業主を異にする場合にも通算して適用されることが改めて示されました。雇用主は、労働者の副業・兼業先の労働時間も考慮に入れて、労働時間を決めなければいけません。また、割増賃金規制についても同様です。例えば、A社で勤務している人がB社でも勤務し始めた結果、通算して時間外労働となった場合、B社の方が割増賃金を支払う義務が生じます。
もっとも、異なる事業主同士で労働時間を把握しあうことは困難です。そこで、上の例で後から労働契約を結ぶB社は、A社での法定外労働時間とB社の労働時間を合計した時間が上限規制(単月100時間、複数月平均80時間以内)におさまる範囲で、労働時間と割増賃金を設定し、この設定範囲内で労働させて割増賃金を支払う限りにおいては、労働基準法を遵守しているものとみなされることとなりました。
B社がA社の法定外労働時間を把握する方法は使用者の自己申告で良いことになっていますので、B社としては、使用者の自己申告による労働時間を前提に自社での労働時間と割増賃金等を設定し、その設定内で管理すれば労働基準法違反を問われないことになります(これを、「管理モデル」といいます。)。
◎健康管理について
健康診断や長時間労働者に対する指導、ストレスチェックなどの健康確保措置の実施対象者の認定については、副業・兼業先の労働時間の通算はありません。
1つの事業場において、所定労働時間が通常の労働者の4分の3以下の場合には、健康確保措置の対象者とはなりません。
もっとも、その場合でも、労働者に対して、注意喚起の徹底や必要に応じて健康確保措置をとるなどの柔軟な対応が望ましいといえます。
◎労災保険給付について
労災の関係者、複数の事業場における賃金を合算して労災保険給付を算定することとされました、また、労災認定にあたっては、複数の事業場での業務上の不可を総合的に評価して認定することとされました。
◎雇用保険・社会保険について
なお、令和4年1月より65歳以上の労働者本人の申出により、1つの雇用関係では被保険者要件を満たさない場合であっても、他の事業場の労働時間を合算して雇用保険を適用する制度が試行的に開始されます。社会保険(厚生年金保険及び健康保険)の適用要件は、事業場毎に判断するため、複数事業場の労働時間の合算はありません。
副業・兼業の促進に関するガイドラインについては、厚生労働省のホームページに詳しく載っていますので、ご覧ください。
今回は以上です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。