口頭弁論のウェブ会議による実施|民事訴訟法改正(2024年3月1日施行)

  • 1 はじめに

 法律事務所Sのホームページをご覧いただきありがとうございます。弁護士の長南(ちょうなん)と申します。

 今回は、2024年(令和6年)3月1日から施行されている民事訴訟法の改正のうち、口頭弁論のウェブ会議による実施についてご案内いたします。

  • 2 口頭弁論のウェブ会議による実施

    • ⑴ 口頭弁論とは

 民事訴訟は通常、

【①訴えの提起▶▶②口頭弁論(◀▶③弁論準備手続等):1回~複数回▶▶④判決】という流れをたどります。

 このうち②口頭弁論とは、原告・被告双方が法廷で対席し、判決をする裁判官の面前で法律上の主張・反論や証拠の申し出等を行い、争点や証拠の整理を行いつつ裁判所が証拠を取調べるといった一連の手続きをいいます。このことからも分かるとおり、口頭弁論はいわば民事訴訟手続の本体にあたる部分です。

 そして、民事訴訟法では、裁判所から判決を受けるには口頭弁論を経なければならないとされています(必要的口頭弁論の原則)。

  • ⑵ これまでの口頭弁論 ~遠方の裁判所に出向く負担~

 これまでは、口頭弁論の際には原告・被告(いずれも代理人(通常は弁護士)を含みます。)の双方が法廷に直接出向いて口頭弁論に臨む必要がありました。

 しかしながら、口頭弁論が行われる法廷が原告・被告の最寄りの裁判所とは限らず、場合によっては非常に遠くの裁判所に訴訟が係属することもあります。

 このような場合であっても、上に述べた必要的口頭弁論の原則から、最低でも1度は原告・被告の双方が法廷に出向く必要がありました。このため、遠くの裁判所に原告・被告双方が足を運ばなければならないといった事態も生じてしまっていました。

  • ⑶ 改正でなにが変わるのか:口頭弁論のウェブ会議による実施

 民事訴訟法の改正により、裁判所が当事者の意見を聴いて相当と認めた場合には、ウェブ会議システムによって口頭弁論の期日における手続を行うことができることとされました(民事訴訟法87条の2第1項)。

 これにより、裁判所へ出向く必要なく訴訟手続を進めることができるようになるため、特に遠方の裁判所で行われる裁判に関して当事者の時間的・費用的な負担が大きく軽減されると思われます。

 ※なお、尋問(当事者や証人に質問して証言を求める手続き)をウェブ会議によって実施するための要件を緩和する法改正も実施されており、今後施行される見通しです。

  • 3 おわりに

 ここまで述べましたとおり、口頭弁論のウェブ会議による実施により、遠隔地での訴訟手続きの負担が大きく軽減されることが想定されます。これにとどまらず、昨今民事訴訟を含む民事裁判手続のオンライン化が迅速に進められています。

 日々進歩する訴訟等の手続を適切に活用するためには、これに通じた弁護士にご依頼いただくことが有効です。民事訴訟の手続等に関してご不明な点がございましたら、お気軽に弊所までご相談ください。

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2024-06-19 | その他