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弁護士の瀬野陽仁(せのはるひと)でございます。
近年、働き方改革関連法の施行など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。
このコラムでは、令和6年5月24日に国会で可決・成立した育児介護休業法等の改正法について簡単に解説させていただきます。
労使双方にとってより良い環境づくりの一助となれば幸いです。
改正の背景:少子高齢化、そして人材不足 – 待ったなしの両立支援
日本の少子高齢化は深刻さを増しており、労働力不足は企業にとって大きな課題となっています。 優秀な人材を確保し、その能力を最大限に発揮してもらうためには、従業員が安心して仕事と家庭生活を両立できる環境づくりが不可欠です。
今回の改正は、このような背景のもと、従業員の仕事と育児・介護の両立を支援する制度を充実させることで、より一層働きやすい社会を実現することを目的としています。
改正のポイント:今回の改正は多岐にわたりますが、特に重要なポイントは以下の3点です。
子の年齢に応じた柔軟な働き方の実現
・残業免除の対象拡大
これまで3歳未満の子を養育する労働者が請求できる残業免除の対象が、小学校就学前までの子を養育する労働者まで拡大されます。
• 子の看護休暇の拡大
子の病気や怪我の際に取得できる看護休暇は、小学校3年生まで取得可能になります。さらに、感染症による学級閉鎖や入学・卒業式への参加なども取得事由に追加されます。
• 柔軟な働き方を実現するための措置
企業は、3歳以上~小学校就学前の子を養育する労働者に関して、始業・終業時刻の変更、テレワーク(月10日)、短時間勤務制度、新たな休暇の付与(年10日)、保育施設の設置運営等のうち、2つ以上を選択して措置することが義務付けられます。
またこれらの措置については、対象となる労働者への個別周知と意向確認も義務となります。
育児休業の取得状況の公表義務拡大と次世代育成支援対策の推進・強化
・育児休業取得状況の公表義務の拡大
これまで従業員数1,000人超の企業に義務付けられていた育児休業取得状況の公表が、従業員数300人超の企業にも拡大されます。
公表内容は、男性労働者の育児休業等取得率または育児休業等と育児目的休暇の取得割合です。
• 行動計画策定時における状況把握・数値目標設定の義務化
従業員100人超の企業は、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定時に、育児休業の取得状況や労働時間の状況把握、数値目標の設定が義務付けられます。 従業員100人以下の企業も努力義務の対象となります。
• 次世代育成支援対策推進法の有効期限の延長
次世代育成支援対策推進法の有効期限が2035年3月31日まで10年間延長されます。
介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化
・介護休暇取得要件の緩和
介護休暇について、勤続6か月未満の労働者を除外することができなくなります。
• 介護と仕事の両立支援制度に関する個別の周知と意向確認
労働者から家族の介護に直面している旨の申し出があった場合、企業は両立支援制度に関する個別の周知と意向確認を行うことが義務付けられます。また、介護に直面する前の段階(40歳など)での情報提供や、研修や相談窓口の設置など、雇用環境の整備も義務付けられます。
今回の育児・介護休業法の改正については、厚生労働省のこちらのページが詳しいので、必要に応じてご参照ください。
最後に
企業の皆様へ
今回の改正は、企業にとって新たな対応を迫られる面も少なくありません。
資源が限られている中で、制度の導入や運用の負担が大きくなるという懸念もあると思われます。
当事務所では、今回の育児介護休業法改正に関するご相談はもちろんのこと、企業の皆様が抱える様々な課題に対して、法務面からサポートさせていただきますので、お気軽にご相談ください。
どうもありがとうございました。