1 国連の掲げるSDGsと、 これからの社会のあり方
近代の経済活動や人口の爆発的増加により、地球レベルの環境汚染や社会的・経済的格差が深刻化し、このまま従来型の経済活動を継続していては人間社会が継続できないという危機感が広まっています。他方で、「将来のために」という掛け声の下に現在の世代に我慢と無理を強いるような運動は、社会において拡がりを持ちえません。
そこで、現在及び将来の世代の欲求を共に満たす開発(持続可能な開発)こそが現代において必要な開発であるという認識の下、国連は持続可能な開発のための複数の目標(行動指針、SDGs)を設定しました。
これは決して夢物語ではなく、実際に社会がこの方向に向かわないと人間社会が持続しないという切迫した認識を背景としているものですが、他方で、今後の社会がこの方向に進むことは間違いなく、ここには今後重視される価値観と社会のあり方が示されているとも言えます。すなわち、我々のような法律事務所や企業が社会において広く支持され発展するためには、(明確に意識すると無意識であるとを問わず)SDGsの価値観に沿っていることは必須であり、そこにビジネスチャンスも存在します。
2 Three Well-Beingと SDGsとの一致
我々は理念として「Three Well-Being」を掲げています。自分達だけ良ければいい、ではなく、社会全体にも目を向け、同時に「良く在る」という意味を含んだWell-Beingを用いた私たちの想いは、「持続可能な開発」の理念に合致するものであり、SDGsは我々自身の目標に他なりません。
そこで、我々は、SDGsの実現に向けた取り組みを進めています。詳しくは、下記リンクをご覧下さい。
<SDGsログへのリンク>
<サガディーGsへのリンク>
SDGsを推進する県内初の法律事務所~Legal Impact~・5年間の中間報告
弊所は、2019年(10周年)から弁護士事務所だからこそ寄与できることを、78億の人類の未来を切り拓くSDGsに乗せて「LEGAL IMPACT」と称して地域課題の解決に取り組んでいます。法律事務所Sの「S」は、始まりの地相模原のS、Sクオリティ(高い解決力)のS、そして持続可能(サスティナブル)のSでもあります。 以下、2023年までの5年間の軌跡を中間報告としてお伝えします。
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市民と企業に質の高い教育を(GOAL4、8)
これまでに相模原市民、横浜の高校生、東海大学の学生、市内ケアマネージャー向けの法教育や実務講演、租税教室、小中学生への職業講話を実施しました。また、2022年1月、市内33企業と共に「さがみはらESD推進協議会」を設立(https://www.sagamihara-esd.com/)し、2023年までに累計18校、2905名の市内小中学生に職業講話を通じてESDを推進しました。 所内には「One Strength推進制度」を設置し、従業員の資格・スキル取得費用に最大50%の補助金支援を行い、現在まで3名が活用しています。 2022年、高知県の高知国際高校からSDGs推進に関する取材を受けました。 -
多角的業種と相乗効果を生かした事業承継(GOAL9、17)
経営者の高齢化に伴い、2017年には県内1163件の企業が休・廃業になり、地域経済に損失を生じています。そこで、地域経済の持続可能な成長と発展のため、関連士業とのネットワークを強化し、多角的な視点で地域企業が持つ有形無形の資産を継承し、未来に繋ぐ事業承継を推進しています。2023年までに合計41件の相談、13件の事業承継を実現しました。中でも、地域のインフラ企業の倒産案件では地域企業の助けを借りて事業譲渡により市内交通手段の維持に成功しました。 -
司法アクセスの改善、経済的更生、女性や子供を暴力から解放(GOAL1、16)
経済的窮状から弁護士を選任することが困難な方へ法テラスを通じて司法へのアクセスを開き「法の支配」を実現しています(149件の事件受任・その他相談のみで96件)。中でも、経済的困窮者の債務整理を125件解決して経済的更生を実現し、女性や子供に対する暴力根絶のための犯罪被害者支援を20件解決し、被害者の人権保障を実現しました。 -
ワーク・ライフと女性活躍(GOAL5、8)
弊所は、2019年4月にコロナ禍での解雇0「誰一人取り残さない」ことを宣言。2022年1月、従来からのテレワークや働き方改革の取り組みを整理して、所内に「ワーク・ライフデザイン雇用制度」を制定。21名のクルーのうち6名(約28%)が活用し、出産、育児、病気、介護時にテレワーク等を活用した働き方のリデザインを実現。女性活躍の推進にも寄与しています。その他残業の原則禁止、プレミアムフライデー実施によりワーク・ライフ・バランスを実現しています。 -
SDGsの推進(GOAL11、17)
2019年3月、弊所弁護士が理事長を務める団体が相模原市にSDGs推進を働きかけて市と市内の企業210社がSDGs推進を開始したのが本市のSDGs推進の始まりです。弊所は、その後も企業のSDGs推進を法律事務所として支援しており、現在まで22社のSDGs推進をサポートしました。 2021年3月には、東日本大震災10周年を機に、家具倒壊等の死傷者減少を目指して相模原市に「市営住宅における災害防止措置実施者の原状回復義務の免除」を提言。2022年3月、神奈川県弁護士会の依頼を受けて「経営力UP!!SDGs経営」と題した講演を開催し、神奈川県の弁護士にSDGsを用いた事務所の経営力改善を推進。また、質の高い寝具の販売で名高い東洋羽毛工業株式会社とともに、相模原市長に廃棄布団のリサイクルを提言。廃棄布団の民間払い下げ制度を実現し、CO2排出の削減と羽毛のリサイクルを実現。さらに、全日本仏教青年会のSDGsコンサルタントとして1年間同会のSDGsを推進。その他一般社団法人SDGsプラットフォームの一員として、大分県で開催された「第2回 みんなで考えるSDGs in HARMONYLAND」に参加しました。
総括
2030年「誰一人取り残さない社会」の実現のために弁護士事務所が寄与できるゴールを掲げ、邁進してきました。そこには平素の弁護士業務では出会えない様々な人との出会いや経験が溢れていました。「弁護士は事件を解決するもの」という固定観念や枠を取り外して自由になれば、私たちが有する解決力はより広い「社会の課題解決」にも寄与でき、そして私たち自身の解決力もより高めてくれると実感しました。 また、一人でできること、単発で行う事業のIMPACTは大きくなくても、ステークスホルダーとパートナーシップを組むこと、そして何より継続することでより大きなIMPACTを実現することができると実感しました。 人は、果てしなく長い道のりの先にあるゴールに対し、その距離と遠すぎて先が見えないことに歩むことを諦めてしまいがちです。でも、小さくても一歩ずつ、そして一時的に後退してもまた一歩ずつ歩んでいけば、必ずいつかはたどり着ける。そう信じてまだ見ぬ景色に胸を躍らせながら皆で歩むことができる、そんな事務所になれるよう今後も邁進してまいります。